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神様の遣い(16)

神様の遣い(16

早苗さんは離婚して幼子を抱えて一人、新しい人生の門出となりました。

https://ameblo.jp/miya-ritumei/entry-12419416839.html

----- 終末 -----

早苗は離婚後に生活を支えるために会社に勤めだしたが、それも長くは続かなかった。

実家の父親の認知症が酷くなり、幼子を連れて実家に戻ることになった。

実家に戻ることで経済的には楽になった。それは両親の年金で生活が出来る事になったことと、幼子の養育費も両親の年金で賄えたからだ。

姉は結婚適齢期を過ぎても、何処にも嫁ぐことも出来ずに実家に居て、会社務めでの収入が実家の家計を支えていたので、早苗は経済的にはずいぶんと楽になったのだ。しかし、その分だけ早苗は実家の家事と両親の介護に専念しなければなかった。

父親の認知症は日々急激に酷くなり、24時間の見守りが必要になり、早苗は母親と交代で父親の見守りを行った。日中は母親が見守りをして、深夜には早苗が朝まで見守るという体制にした。

でも、父親の介護見守りも長くは続けないで済んだ。

父親は認知症を患いだして1ヶ月ほどで誤嚥性の肺炎で緊急入院した。

救急搬送された父親は苦しむわけでもなく静かに眠っているようだった。

レントゲン検査の映像は、すでに両肺の70%が真っ白に映って、腎臓や他の臓器の余病も併発していて、もはや救命は厳しいとの医師の説明に早苗は涙が溢れだした。

あれほどに乱暴者の父親ではあったが、最後はこんなにあっけないとは。

病室には母親と姉と早苗の三人だけ。

思い起こせば、乱暴者の父親であったが、認知症を患いだしたこの一か月は、早苗にとっては父親との絆が出来た人生最後の時だった。

認知症になった父親は、それまでの乱暴者の父親ではなかった。

常に傍に寄り添っている早苗に対して、独りごとのように父親の口から洩れる言葉に涙した。

「早苗、今日はいい天気だなあ」

「どうしたの? お父さん、外は雨だよ」

「雨なんか降っている訳はない、こんないい天気の時は、お前と一緒に旅行に行ったことを思い出しただ、あの旅行は良かったなあ、早苗が一緒で良かった…、良かった」

「何言ってるの? トンチンカンのこと言って」

「バカ、何がトンチンカンだ、俺はお前が傍に居てくれて嬉しい、お前が家に帰ってきてくれて嬉しい」

「・・・・・」

早苗に返す言葉は無かった。

ただ涙が止まることもなく流れ続けた。

病室にはモニタリング装置の「ピッ、ピッ」の音だけが響き、早苗の頭にはこれまでの様々な父親との出来事が走馬灯のように現れては消えていた。

「お父さんありがとう。お父さん本当にありがとう」

早苗の言葉に母も姉さんも涙を流した。

あれほど怒鳴り合い、罵り合った家族なのに、こんな最後ならもっと早くにこうなっていたらいいのに、早苗は自分の力不足に悔やんだ。

やがてモニタリング装置の発信音が途切れだして、血中酸素濃度の数値も50を下りだした。

もはや、父親は深い深い眠りの中にいた。家族の呼びかけにも反応することもなく、静かに安らかであった。

装置の発信音が止まり、赤いランプが点灯し、看護師さんが病室に入ってきた。そして担当の医師も入ってきて死亡確認された。

朝の615分。病室の窓にまぶしい朝日が差し込んでいた。

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by miya4240882 | 2018-11-18 10:05 | 占い

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by miya4240882