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神様の遣い(8)

神様の遣い(8

幼少期から親からの虐待や、小学校での先生からの暴力で涙の日々が多い早苗さんですが、同級生の中で唯一親切にしてくれた友達が居たことは救いでした。

前回までの記事

https://ameblo.jp/miya-ritumei/entry-12412284612.html

----- 小学校の友達のお母さん -----

早苗は学校が終わって帰りがけに、同級生の美代ちゃんに誘われ彼女の家に寄っていくことになりました。

美代ちゃんのお母さんは働きには行っていなくて、いつも家に居てくれるようです。美代ちゃんの家に行くのは初めての早苗でしたので、心臓がドキドキです。

学校から歩いて15分ほどの所に有る美代ちゃんの家は、小ぢんまりとしてはいるが、まだ新しく洋風の作りの白い家でした。道からドアに入る小さな庭先には雑誌で観るような鉢植えが幾つも並んで、見ているだけでもウキウキする気分になります。白い玄関ドアを開けて入ると、家の中も綺麗に片付いています。

早苗の家の中とは大違いです。

早苗の家は古い長屋住宅のようなところで、玄関の戸も開ければガラガラと音を立てる引き戸で、途中で何回も引っかかってスムースには開けられない戸です。

一歩入った家の中も不要なものが床に置きっぱなしになっている状態で、居間も所狭しと本や脱いだ衣類が積み重なっています。

畳は擦り切れて綺麗なズボンにも畳の屑が付くほどです。

美代ちゃんの家に入ってリビングに通されて、早苗は改めて部屋の中を見回してみると、食器棚もレストランみたいに綺麗なもので、棚の中には可愛い食器が並んでいます。

「まあ、早苗ちゃんね? よく来てくれたねえ、いつも美代から早苗ちゃんの話は聞いているのよ」

そう言って美代ちゃんのお母さんはキッチンから微笑みながらリビングに入ってきました。

「さあさあ、ランドセルは置いて、おやつにしましょ。用意しておいたからね」

美代ちゃんのお母さんは、すでに用意してあったお菓子とココアをテーブルに二人分揃えてくれました。

早苗は美代ちゃんと二人並んで、表面がピカピカ光るテーブル着きました。お母さんは向かい側の椅子で、早苗の顔を微笑みながらじっと眺めています。

美代ちゃんのお母さんにジッと見詰められるだけでも、嬉しくなってしまった早苗は、とても幸せな気分です。

嬉しくて早苗もニコニコしてしまいました。

出されたお菓子は早苗が食べたこともないし、初めて見るお菓子です。

手に取ってじっと見ていると、美代ちゃんが、

「このお菓子はクッキーって言うのよ、お母さんの得意なお菓子なの」

「くっきー?」

早苗は不思議そうに、そっと口にしてみました。

口に入れて少し噛むと、ポロっと口の中で砕けて、不思議な甘さが広がっていきます。

早苗にとっては不思議な美味しい初めての体験です。

物凄く高級なお菓子を食べた気分です。

「美代ちゃん、このお菓子って、毎日食べれているの?」

「うん、お母さんはお菓子作るのが大好きなの、いろんなお菓子を作って、私に実験台みたいに食べさせるの」

「へー、いいなあ、こんなの毎日食べれるんだ」

早苗は美代ちゃんのことが羨ましくて、どうしようもなくなりました。

早苗の家では、そもそも「おやつ」などという習慣は有りません。

「おやつ」という言葉は、本か何かで観たことは有りますが、美代ちゃんが美代ちゃんの家で「おやつ」という習慣が日常に成っていることが不思議でした。

さらに、とっても甘いココアも早苗にとっては初体験です。

世の中にこんなに甘くて美味しい飲み物が有るなんて知りませんでした。

改めて自分は、なんて貧乏な寂しい家に生まれたのだろうと涙が出てきてしまいました。

「あら、どうしたの? 早苗ちゃん涙なんか流して、おばさんが何か気に障ることでも言ったのかしら?」

「ううん、おばさんが優しくて、こんなに美味しいものを食べさせてくれて嬉しくて…」

涙と鼻水が、すするココアと混ざって変な味になってしまいます。

「まあ、そうなの? こんなもので早苗ちゃんのお口に合うか心配だったのよ。美代なんか、もうクッキーは嫌だっていうんだもの」

おやつを食べ終わったら、美代ちゃんのお母さんは、

「ねえ、宿題あるんでしょ? おばさんと一緒にやりましょ? 美代は一緒に宿題をやらないと自分では始めないの、早苗ちゃんもやろう?」

そう言って、お母さんは早苗たちの宿題を手伝ってくれるのだった。

早苗は宿題すら家では、一人でやるしかなく、父親が帰ってくる前に片付けておかないと、教科書すらも破られてしまうからだ。

宿題も終わって、早苗と美代ちゃんはテレビアニメのビデオを一緒に見始めました。もちろん早苗の家にビデオ装置など有る訳が無いです。

床のふかふかの毛の絨毯の上にひっくり返って二人でビデオを見ていると、

「あら、早苗ちゃん。シャツのボタンが取れそうよ」

美代ちゃんのお母さんは早苗のシャツのボタンを指で摘まんで言いました。

「おばさんが直してあげるね」

おばさんはそう言って裁縫道具を出してきました。

「早苗ちゃん、おばさんがシャツのボタンを治す間、このシャツを脱いで美代のトレーナーを着ていてね」

そう言って、美代ちゃんの赤いミッキーマウスのトレーナーを出してくれました。美代ちゃんのトレーナーを着た早苗は、またまた涙が出てきてしまいました。こんなに可愛いトレーナーは一度でいいから来てみたかったのです。

クラスでも一番に小さい早苗は、美代ちゃんのトレーナーは少し大きくて、袖から手が出ないけど、モコモコの温かい感触が何とも言えない優しさを感じさせました。

また、そのトレーナーは不思議な良い香りもします。甘い香水のようで爽やかな香りです。洗剤の香りでしょうか、それともお母さんのコロンでしょうか、早苗の家では有り得ない香りです。

「早苗ちゃん、前のボタンは直したけど、袖口のボタンが無くなってしまってるよ。違うボタンだけど、とっても可愛いボタンが有るから左右の袖口を一緒に替えてあげるけど、大丈夫?」

「うん、大丈夫、でも、おばさん、ボタンを貰ってしまっていいの?」

「いいわよ、おばさんには、いっぱい色々なボタンが有るから」

美味しいおやつも食べさせて貰い、宿題も、シャツも直してもらい、楽しいアニメのビデオも見せて貰って、早苗は極楽に行った気持になりました。

美代ちゃんの家での時間は、あっという間に過ぎていきます。

自分の家に帰ると寂しい嫌な現実があります。

それでも、それからは頻繁に、早苗は美代ちゃんの家に寄って、宿題も済ませたり、おやつやビデオも楽しませて貰うようになりました。

美代ちゃんのお母さんは、早苗を自分の子供のようにして、接してくれました。

毎日の学校の辛いことも、嬉しいことも、何でも話を真剣に聞いてくれました。また様々なことでも早苗を褒めてもくれました。

「偉いわねえ~早苗ちゃん」

そんな言葉は生まれてから一度もかけられたことは有りません。

早苗が当たり前のように聞く言葉は「バカヤロー、お前は何というダメな奴だ」

こんな言葉に慣れてしまった早苗は、美代ちゃんのお母さんの言葉には毎回涙を流しました。

「この世に、私のことを認めてくれる人が居る。私は生まれて来ても良かったんだ」

そんなある日、早苗が家で脱いだ服を母が手に取って怒り出しました。

「早苗! この服のボタンはどうしたんだい?」

早苗はニコニコしながら答えました。

「美代ちゃんのおかあさんが直してくれたの。今までにも時々、あたしのシャツの破れた所を直してくれたり、無くなったボタンを付けてくれたの」

それを聞いた母の顔がにわかに険しくなりだした。

「何だって! 他所のおばさんに直して貰ったのかい? お前はまったく、どうしようもないねえ、お前は本当に恥さらしだ! なんだって家に中の恥を他所でさらすんだ! こんな事をされたら、私は何にも出来ないダメな母親を宣伝してるのと一緒じゃないか!」

そう言って、母親は早苗の頬に平手打ちを食らわしたのです。

「もう二度と美代ちゃんの家には行くんじゃないよ、いいね? 分かったね?」

しかし、早苗は密かに美代ちゃんの家に立ち寄り続けました。

でも、洋服の直しなどは断るようになりました。

美代ちゃんのお母さんは、

「そうなの? じゃあ、おばさんは早苗ちゃんに悪いことをしてしまったね。じゃあね、成るべく分からない様に、直すからね」

早苗は今になって思えば、小学校の時に、このおばさんに出会えたことは、その後の辛い人生を生き抜いていくことの、大きな支えになっていたと思いました。

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by miya4240882 | 2018-10-18 10:50 | 人生

先が観えること、占いで出来る唯一の利点。自分は、どんな?態で、どういう状況になっているんだろう。そんな疑問に答えてくれるのが占いです。


by miya4240882